一家に1枚「ウイルス」

自然環境から人間社会へ

カやマダニはウイルスを媒介する「運び屋」!?

媒介生物とは

ウイルスの媒介生物は、生物の間(例えば、動物とヒトとの間やヒトとヒトとの間)でウイルスを伝播させます。これらの媒介生物の多くは節足動物で、感染したヒトや動物などから吸血する時に疾患を引き起こすウイルスを取り込みます。その後、次の生物から吸血する時に、そのウイルスが吸血されている生物の体内に侵入し感染することで、ウイルスが媒介されます。ヒトにおいて感染症を引き起こすウイルスを媒介する生物として、カやマダニなどがよく知られています。また、節足動物の体内で増殖し、吸血行動によってヒトなどの哺乳動物に感染するウイルスを総じてアルボウイルス(arthropod-borne virus)と呼びます。蚊媒介感染症であるデング熱の場合、128か国以上で39億を超える人々が感染のリスクにさらされ、年間9,600万人が感染していると推定されています(1、2)。

ウイルスを媒介するカ

カは日本脳炎ウイルスやデングウイルスなどを生物の間で媒介します。

  • ● 日本脳炎ウイルス:コガタアカイエカなどにより媒介されます。近年、国内の日本脳炎の年間症例届出数は、ほぼ10例以下で推移しています(3)。
  • ● デングウイルス:主にネッタイシマカにより媒介されます。流行地に渡航することでデングウイルスに感染し、国内で発症する症例(輸入症例)が増加傾向にあり、近年は輸入症例が年間200例前後報告されています(4)。
「デングウイルスやジカウイルスなどを媒介するカ(ネッタイシマカ)(写真提供:鳥居志保(パスツール研究所))」:画像
デングウイルスやジカウイルスなどを媒介するカ(ネッタイシマカ)(写真提供:鳥居志保(パスツール研究所))

ウイルスを媒介するマダニ

マダニは重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスやダニ媒介性脳炎ウイルスなどを生物の間で媒介します。

  • ● 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルス:主にマダニにより媒介されます。2013年にSFTSの患者が国内で初めて確認されて以降、毎年60から100名程度の患者が報告されています(5)。
  • ● ダニ媒介性脳炎ウイルス:マダニにより媒介されます。日本国内では、北海道において平成5年(1993年)に1例、平成28年(2016年)に1例、平成29年(2017年)に2例及び平成30年(2018年)に1例、発生が報告されています。北海道の一部地域においてダニ媒介脳炎ウイルスが分布していることが明らかにされています(6)。
ウイルスを媒介するマダニの一種(ヤマトマダニ)(写真提供:鳥居志保(パスツール研究所)):画像
ウイルスを媒介するマダニの一種(ヤマトマダニ)(写真提供:鳥居志保(パスツール研究所))