一家に1枚「ウイルス」

自然環境から人間社会へ

コウモリからは様々なウイルスが見つかっている

コウモリとウイルス

コウモリからは様々なウイルスが見つかっており、その中にはヒトに重篤な病気を引き起こすウイルスも存在します。以下は、コウモリから検出されたウイルスの例です。

  • ● SARS関連コロナウイルス:SARSを引き起こす。キクガシラコウモリやコキクガシラコウモリなどからSARSコロナウイルス1に近縁のウイルスや新型コロナウイルス(SARSコロナウイルス2)に近縁のウイルスが見つかっている。
  • ● エボラウイルス:エボラウイルス病を引き起こす。アフリカでは、オオコウモリ科の、特にウマヅラコウモリ、フランケオナシケンショウコウモリ、コクビワフルーツコウモリがエボラウイルスの自然宿主と考えられている。
  • ● ニパウイルス:自然宿主はオオコウモリ。ニパウイルス感染症を引き起こす。ニパウイルス感染症は、バングラデシュからインド北東部でほぼ毎年のように発生(1)。
  • ● 狂犬病ウイルス:狂犬病を引き起こす。ウイルスを保有する吸血コウモリに触れたり咬まれたりして感染した例が、海外にて報告されている。
  • ● リッサウイルス属のウイルス(狂犬病ウイルス以外):リッサウイルス感染症を引き起こす。アフリカ、東西ヨーロッパ、オーストラリア大陸に生息するオオコウモリや小型コウモリなどから検出されている(2)。

なぜコウモリから様々なウイルスが見つかるのか

コウモリの抗ウイルス応答はヒトの抗ウイルス応答とは大きく異なるかもしれないと考えられています。例えばエジプトルーセットオオコウモリは、インターフェロン遺伝子などの抗ウイルス応答関連遺伝子をヒトよりも多く保有することが明らかとなっています(3)。さらに、クロオオコウモリにおいては、ウイルスが感染していなくても、抗ウイルス応答関連遺伝子であるインターフェロンα遺伝子ファミリーが恒常的に発現していることがわかっています(4)。また、エジプトルーセットオオコウモリでは、ウイルス感染時に炎症応答に関連する一部の遺伝子の発現誘導が起こりづらいことが示されています(5)。このようなコウモリとヒトとの自然免疫応答の違いが、コウモリから様々なウイルスが見つかる原因かもしれません。

日本のコウモリ(写真提供:鍋島圭(国立環境研究所):画像
日本のコウモリ(写真提供:鍋島圭(国立環境研究所))