一家に1枚「ウイルス」

ウイルスの研究・活用

農作物を守るウイルス活用技術

弱毒ウイルスを用いたウイルス病防除

植物は動物のような免疫細胞を持っていないため、抗体による免疫システムで自身を守ることができません。一方で、遺伝的に近縁なウイルスが同時に植物に感染すると、いずれかのウイルスによる症状が軽減される「干渉効果」が知られていました。この現象を利用して、予め病原性の弱いウイルス(弱毒ウイルス)を植物に接種しておくことで、近縁のウイルスの感染や増殖を防ぐ技術が開発されています(1)。このような弱毒ウイルスは植物ウイルスワクチンとも呼ばれます。日本では、キュウリのモザイク病を防除するため、ズッキーニ黄斑モザイクウイルスの弱毒株水溶剤が農薬として登録され、利用されています。

害虫の殺虫剤として用いられるウイルス

日本では、茶栽培における重要害虫のハマキ類に対して、ウイルスが農薬として登録・実用化されています(2)。この農薬には、特定のハマキムシにしか感染しない顆粒状のウイルスが含まれており、幼虫が感染すると蛹になることができず、やがて死亡します。海外では、穀物や野菜、果樹の害虫に対して、ウイルスが農薬として実用化されています。