一家に1枚「ウイルス」

ウイルス感染症と社会

どうやってウイルス感染症と向き合う?

ウイルス感染症の流行やその損害をくい止める活動があります。

感染症サーベイランス

感染症が全国でどのくらい発生したのかを調査集計しています。感染症の発生を把握、分析し、その結果を国民や医療機関へ素早く提供します。それによって、感染症に有効な予防・診断・治療、またその発生やまん延の防止に役立てます(1、2)。感染症サーベイランスは、主に病原体の検出と患者発生の報告を含み、主に以下のような仕組みで情報を収集分析します。

  • • 感染症サーベイランスの実施体制:感染症法(正式名称: 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)に、届出が必要な対象感染症が定められています。これらの対象感染症の診断をおこなった医師は、保健所に届け出をおこない、その情報は地方感染症情報センターに報告されます。収集された情報は、さらに国立感染症研究所 感染症疫学センター内の中央感染症情報センターに集められ、分析を経て、その結果は全国情報として速やかに提供・ 公開されます(3)。
  • • 医療機関、検疫所:各医療機関における診療からだけでなく、空港や海港などの検疫所も、海外からの帰国者・入国者に対する病原体検出報告をおこなっています(3)。
  • • 保健所:地域住民の健康を支える中核として、病気の予防、公衆衛生の向上、地域住民の健康増進に関する活動を担っています。都道府県、指定都市、中核市、特別区などに設置されています。(4)
  • • 地方衛生研究所:公衆衛生の向上のために、科学的専門性を活用し、各種の試験・検査や、調査研究、公衆衛生情報等の収集・解析・提供のほか、研修指導を行います。ほとんどの都道府県や指定都市に設置されています。原則として各都道府県内に地方感染症情報センターが設置されます(4)。
  • • 国立感染症研究所:厚生労働省附属の試験研究機関として、感染症に関わる基礎・応用研究、検査実施を含む活動、感染症サーベイランス、ワクチン等国家検定と品質管理、国際協力、研修実施、国民への啓発活動などをおこなっています(5)。感染症サーベイランスの中核を担います。

医療体制

感染症の診療・検査は主に医療機関等が担います。特に感染力と病気の重篤さを勘案し、感染症法上に定められた感染症は一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症、新感染症に分類され(詳しくは「ヒトに病気を引き起こすウイルス」をご覧ください)、感染症指定医療機関では、これら特定の感染症患者の入院治療を行います。感染症指定医療機関には、対象感染症の種類に応じて特定感染症指定医療機関、第一種感染症指定医療機関、第二種感染症指定医療機関、結核指定医療機関の4種類があります(6)。またこれらの感染症の患者に対する医療について必要な措置が感染症法に定められており、感染症の発生とまん延の防止が図られています。

国際連携

世界保健機関 (World Health Organization:WHO) は、「全ての人々が可能な最高の健康水準に到達すること」を目的として、1948年4月7日に設立された国連の専門機関です。WHOは世界的な保健問題に関して課題の作成、規範や基準の設定、技術的支援などにより政策決定に貢献します。現在の加盟国は194カ国であり、日本は1951年5月に加盟しました。日本はWHO加盟国として、WHO総会や日本が所属するWHO西太平洋地域の会合に参加し、日本の保健医療分野に有用な国際的な情報を入手すると共に、世界の保健課題の解決にも貢献しています(7)。

基礎・応用・臨床研究

研究所や大学、企業等では、ウイルスの感染や病気発症の仕組みを研究することで、感染症の予防法や治療法の開発が行われています。また検査・診断法の研究開発や、感染症流行に関する調査と予測、ウイルスの起源に関する研究なども幅広く行われています。