一家に1枚「ウイルス」

人類との関わりの歴史

植物ウイルス病の最古の記録!?

万葉集は植物ウイルス病の最古の記録書!?

万葉集巻十九には、孝謙天皇による以下の歌が採録されています。

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題詞:天皇・太后共に大納言藤原家に幸せる日に、もみてる(黄葉)沢蘭一株抜き取り、内侍佐々貴山君に持たしめ、大納言藤原卿と陪従の大夫等とに遣し賜ふ御歌一首命婦誦みて曰く

歌本文:この里は 継ぎて霜や置く 夏の野に 我が見し草は もみちたりけり
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(注1)

これは、夏であるにも関わらず黄化した草(題詞における「もみてる沢蘭」)について詠まれた歌です。この歌に登場する草はヒヨドリバナだと考えられています(注2)。ヒヨドリバナ葉脈黄化ウイルス(Eupatorium yellow vein virus; EpYVV)がヒヨドリバナに感染すると葉の一部が黄化するため、この歌に登場した黄化したヒヨドリバナはEpYVVに感染していたと考証されています。752年(天平勝宝二年)に詠まれたこの歌は植物ウイルス感染の世界で最古の記録であるとされています。

万葉集(江戸時代の写本)(画像提供:奈良県立万葉文化館):画像
万葉集(江戸時代の写本)(画像提供:奈良県立万葉文化館)
EpYVVに感染していないヒヨドリバナ(左)と感染したヒヨドリバナ(右)(画像提供:冨高 保弘(農研機構)):画像
EpYVVに感染していないヒヨドリバナ(左)と感染したヒヨドリバナ(右)(画像提供:冨高 保弘(農研機構))