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ヒトゲノム解析プロジェクト

2015年、わが国の政府は、希少遺伝疾患、がん、認知症、感染症、ファーマコゲノミクスの5つを、ゲノム情報を医療に活用する優先対象分野として指定しました。これらの研究を進めるためには、生殖細胞系列の遺伝子バリアントを、体細胞変異、遺伝子発現プロファイル、環境因子などの情報と組み合わせて解析することが重要です。

生命医科学研究センターでは、ゲノムワイド関連解析やターゲットシーケンス解析・全ゲノムシーケンス解析を用いた関連解析を進め、様々な疾患や表現型を解析しています。例を挙げると、がん(桃沢・中川)、ファーマコゲノミクス(莚田)、骨関節疾患(池川)、糖尿病(堀越)、循環器疾患(伊藤)、自己免疫疾患(山本 一彦)、そしてそれらのデータの統合的解析(寺尾)です。また、生殖細胞系列の遺伝子バリアントの解析に用いられるDNAマイクロアレイ・データから、体細胞変異に関する情報を引き出す試みも始めています。さらに、FANTOMやヒト一細胞アトラスプロジェクトを進めている研究グループが得た非翻訳領域に関する知見や、1細胞シーケンス解析結果を私たちの研究結果と統合し、疾患生物学・病態のさらなる理解に努めています。また、この研究のためにバイオバンク・ジャパン(BBJ)や東北メディカル・メガバンク機構などの国内外の大学や研究所との共同研究体制を構築しています。

2020年の重要な成果のひとつとして、血中で体細胞変異を持つ白血球がクローン性に増殖する「体細胞モザイク」という現象(Mosaic Chromosomal Alterations: mCA)の基盤データを得たことです(https://www.riken.jp/press/2020/20200625_1/index.html)。BBJ登録者17万9417人から3万3250個の体細胞モザイクを同定し、加齢に伴いmCAの出現が不可避とみられることを明らかにしました。また、ヨーロッパ人と日本人におけるmCAゲノム座位の大きな違いにより、これらの2民族間におけるB細胞性白血病・T細胞性白血病の相対的な違いの一部を説明できるかもしれません。



2万7910人のBBJ登録者から発見された、3万3250個の常染色体上mCA

図: 2万7910人のBBJ登録者から発見された、3万3250個の常染色体上mCA

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