Director's Messageご挨拶

健康長寿社会の実現を目指す“最適”な医療に向けた、
世界の医科学を推し進める研究基盤の構築

高齢化が進む日本にとって、生活習慣病やがん、脳機能障害などは差し迫った課題となっています。この点で、免疫機能は自己免疫疾患や感染症、アレルギーだけでなく、高齢化に伴うさまざまな疾患にも 大きく関係することが分かってきました。疾患の発症は、個人個人が生まれながらにもっているゲノム情報に加え、環境からのストレス、生体の反応が高次に組み合わさって引き起こされていると考えられています。

生命医科学研究センターでは、ヒトの疾患の発症機序を解明し、新たな診断法や治療法を確立することを目指して、ヒトのゲノム機能と免疫機能の解明を中心に研究に取り組み、新しい医学の創成に貢献していきます。生体を、 環境からのストレスに応答するひとつの恒常性システムととらえ、恒常性の破綻によってどのように疾患が発症するのかを理解するとともに、新たな診断法や新薬の創出へつながる研究基盤を築きあげていきます。

具体的には、これまで多くの成果を出してきた免疫やゲノム分野の当センターに、FANTOMプロジェクトなどで世界をリードしてきた遺伝子発現解析を中心とするゲノム機能研究のグループが新たに加わりました。これにより、 ゲノム機能解析と生体の免疫システム解析が統合され、新しい研究プラットフォームが形成できます。そして、これらをフルに活用することで、ヒト疾患の発症機序や治療法に関する最先端の研究を行ないます。

さらに、ゲノム、エピゲノム、タンパク質や脂質から、細胞、組織そして個体まで、各階層にまたがる網羅的な研究を展開し、集積した膨大かつ最先端のデータを、統計学や人工知能を駆使して解析し、病院など医療に関わる組織、 特に臨床医や疾病の研究に携わる方々にとって活用しやすいかたちに編集し、提供していきます。また、マウスなど実験動物で得られた成果をヒト免疫研究へ還元する基盤やヒトの病態をマウス個体や細胞などの実験系で再現し 解明するための研究基盤を構築し、これらの基盤を生かして次世代のがん免疫研究などへ展開致します。最先端の知見と優れた研究環境をもって、国内外の大学を含む研究機関や企業と連携をとりながら、 健康長寿社会を実現させるために、次世代の医科学に貢献する基盤形成の実現を目指していきます。
生命医科学研究センター長山本 一彦

生命医科学研究センター長 山本一彦の顔写真