生体内タンパク質構造解析研究チーム

研究紹介

当研究室は、理研横浜クライオ電子顕微鏡施設が持つcryo-FIB/SEM装置Aquilos2と300 kVクライオ電子顕微鏡KriosG4を利用し、主に哺乳類由来培養細胞よりクライオ電子線トモグラフィー(cryo-ET)データを取得することで研究を進めています。現在は特に、脂質二重膜の形状とその制御機構に着目した研究プロジェクトを推進しています。

 

1. 核膜の変形を駆動する分子機構の解明
真核生物の細胞が持つ核は、細胞が置かれる条件に応じてその形状や機械的な性質を変化させることが知られています。例えば、細胞分化の過程では核膜に機械的なストレスがかかることが知られていますが、この際に核膜孔複合体のサイズや核膜の厚みに変化が生じることがcryo-ETによる解析から明らかになりました(Taniguchi et al., Nat Cell Biol, 2025)。こういった変化は、核膜の周囲に存在する細胞骨格やクロマチン、核膜を裏打ちするラミンネットワークが核膜に作用して引き起こされると考えられますが、その分子メカニズムの理解は不十分です。我々は、核膜の大規模な変形が起こる細胞応答に着目し、変形した核膜周辺をcryo-ETにより観察・解析することで、核膜周辺の分子構造がどのようにして核膜に作用し、核の変形を引き起こすのか、を理解することを目指します。

 

2. 膜小胞形成過程の分子機構の解明
真核生物において、細胞外や細胞膜上にて機能するタンパク質は、膜小胞による小胞輸送を介して細胞内から最終的な目的地へと輸送されます。この過程では、小胞体やゴルジ体といった細胞内小器官にて積荷タンパク質が膜小胞に選択的に積み込まれます。膜小胞形成の過程では、膜上へのタンパク質分子の集積や積荷タンパク質の認識、膜の変形などの現象が、空間的な制御のもとで起きていると考えられます。我々は、膜上に集積するコートタンパク質の形状や空間的分布をcryo-ETにより解析することで、分子構造の視点から膜小胞形成機構の理解を進めることを目指します。

 

3. 多様な試料へのcryo-ETの利用
近年の技術革新により、組織や個体といった試料についてもcryo-ETにより観察・解析することが可能となりました。当研究室では、高圧凍結法による試料凍結やcryo-FIB/SEM装置による試料切削の最適化を通して、特に組織に由来する試料でのin situ構造生物学の実現にも挑戦しています。

 

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