高機能生体分子開発チーム

研究紹介

• 生命の起源
太古の地球上で生命がどのように誕生したのかは,生物学における中心的な問いの一つです。現存する生命システムの中心には,タンパク質(RNAポリメラーゼ)とRNA(リボソーム)の相互合成関係が存在しますが,これらの巨大な分子複合体の起源・初期進化過程はほとんど解明されていません。この問いに取り組むために,私たちは単純なペプチドと現代の巨大なRNAポリメラーゼの進化的中間体を再構築しています。これまでに,単純な正電荷ペプチドがRNA酵素の活性を促進することや(Tagami et al., Nat Chem, 2017),自己組織化ペプチドがRNAを吸着・濃縮できることを報告しました(Li et al., Nat Commun, 2022)。また,わずか7種類のアミノ酸からなるペプチドを用いてRNAポリメラーゼの中心構造を再構築することにも成功しました(Yagi et al., JACS, 2021)。さらに,このRNAポリメラーゼの中心構造に単純な変異を加えていくことで,リボソームタンパク質等に保存されている別のタンパク質構造に変化することを発見し,セントラル・ドグマに関わる多様なタンパク質が共通祖先から進化してきたことを実証しました(Yagi et al., Nat Commun, 2024)。最近では,好熱性バクテリオファージから古代RNAポリメラーゼのモデルとなるような非常に単純なRNAポリメラーゼを同定し,その構造解析なども行っています(Chaban et al., Nat Commun, 2024)。

 

• 特殊修飾ペプチド
修飾・環状化ペプチドは,高い安定性と特異性を有することから,次世代創薬への利用が期待されています。lassoペプチドは,細菌由来の抗生物質ペプチドであり,N端側の環状構造をC端側の直鎖部位が貫通する特殊な結び目構造を持っています。lassoペプチドの構造はlassoペプチド生合成系タンパク質B1,B2,Cの協調的な作用によって実現されますが,そのメカニズムの詳細は未だ解明されていません。lassoペプチドの成熟過程を解明するため,我々はまず,前駆体ペプチドと複合体を形成したB1タンパク質の結晶構造を決定しました(Sumida et al., ACS Chem Biol, 2019)。さらに,無細胞翻訳系とAIによる構造予測を組み合わせたB2タンパク質の高速変異解析を行い,B1との相互作用表面を特定しました(Alfi et al., ACS Synth Biol, 2022)。最近では,Bacillotaに広く分布する新しいRiPP群linear polyphosphorylated peptides(LPPs)を同定し,その生合成系がlassoペプチド経路としばしば隣接して存在することを見いだしました。さらに,それぞれのRiPP recognition element(RRE)が対応する前駆体ペプチドを選択的に認識することで,類似したRiPP生合成経路間の干渉を防いでいることを明らかにしました(Popov et al., Nat Commun, 2026)。また,改変lassoペプチドに基づいたPETイメージングプローブを開発することで,lassoペプチドの生物医学への応用可能性を実証しています(Mohri et al., Eur J Pharm Sci, 2023)。

 

• ペプチド探索技術 (和田 章)
ペプチドの分子進化のプロセスを試験管内で再現した「ペプチド探索技術」を設計・開発しています.具体的には、約10^12種類のペプチドライブラリーとそれらをコードするmRNAをリボソームを介して対応付けた複合体を合成し,その中から標的分子と特異的に相互作用するペプチドを提示した複合体だけを選別します.そして、その複合体から単離したmRNAの配列解析により標的結合性ペプチドを同定することを可能にしています.さらに現在,ペプチド探索技術の多様化と実践的な検証により,医薬品候補のタネとなる人工ペプチドを創出し,バイオ創薬分野の新たな展開を目指して取り組んでいます.

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