免疫恒常性研究チーム
<研究内容の紹介>
自己免疫疾患の発症を抑制するメカニズムを研究しています
Tリンパ球(T細胞)は、細菌やウイルスなど(外来異物)に対する免疫応答に重要です。そして、そのほとんどは“胸腺”と呼ばれる組織で産生します。胸腺は、心臓に覆いかぶさるように存在するリンパ組織です。
胸腺でT細胞が産生する際、外来異物だけでなく、自分自身の組織にあるタンパク質(自己抗原)に対し免疫応答するT細胞(自己応答性T細胞)も生じてしまいます。もしも自己応答性T細胞が免疫応答を開始すると、自己免疫疾患が発症します。
ところが幸いなことに、自己応答性T細胞の多くは、胸腺内で除去され、自己免疫疾患の発症は未然に抑制されています。
その原理は簡単です。胸腺で産生したT細胞が、胸腺内で自己抗原を認識した場合、それらは自己応答性T細胞と見なされて除去されます。
困ったことに、この機構には問題点もあります。すなわち、この機構が働くためには、自己抗原が胸腺で発現しなくてはいけません。例えば、インシュリンのように膵臓だけで発現し、機能するタンパク質に関しては、この機構は働けず、I型糖尿病のような自己免疫疾患になってしまうことになります。
この問題点を解決する細胞が「胸腺髄質上皮細胞」(以下、髄質上皮細胞と略)です。髄質上皮細胞は、胸腺の内部(髄質)に局在する上皮細胞であり、胸腺にほんの少数しかありません。
ところが髄質上皮細胞は、他の細胞にはない、とてもユニークな特徴を持っています。すなわち、体の他の組織(膵臓、肝臓など)にだけ発現するタンパク質(組織特異的な自己抗原)を、非常に多種類にわたり、異所的に発現します。
この性質により、例えば、インシュリンに応答する自己応答性T細胞も、胸腺でインシュリンを認識して除去され、糖尿病の発症は未然に防止されます。
また重要なことに、この髄質上皮細胞が異常になると、自己免疫疾患を発症することがわかっています。
髄質上皮細胞が自己免疫疾患の発症抑制に重要なことは明らかです。けれども、どのような機構で組織特異的な自己抗原を“異所的”に発現するのか、よくわかっていません。私たちは、現在、その解明を目指しています。
一緒に研究してくれる方、みんなで大歓迎です。