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生命医科学研究センター センター長インタビュー
2021年を迎えて

2021年1月28日 NEWS

2020年4月より新センター長に着任された山本一彦先生に、激動の2020年を振返りながら
センターとしての2021年をどう迎えていくかお話をうかがいました。

 
Question
2020年はIMSにとってどのような年でしたか?
Answer
3月ごろから新型コロナの影響がはっきりしてきて、4月初旬に緊急事態宣言がでて、基本的にはコロナ研究以外は実験系の研究が実質ストップになったということが最も大きかったことです。さらにそれが解決されないまま2021年まで続いていることです。情報系の研究は、在宅でできる部分は継続できましたが、それでも影響はかなりあったと考えられます。
5月末以降は段階的に制限が解除されてきましたが、研究室内での密を避けるために、時差勤務を計画しなければならないなどで、結果的にお互いの意思疎通が不十分で、それが研究にも影響されました。ミーティングはほとんどリモートで、良い面もありましたが、情報交換として対面の要素がかなり阻害されました。
また、新人教育が不十分にならざるを得なかったこともあります。一方、論文を期間内に仕上げなければならない大学院生への影響も少なくなかったと言えます。また、入国制限のため、理研で研究する予定の外国人も2020年12月現在でも理研全体で100人以上が本国で足止め状態です。IMSが直接関係している、IMSと日本免疫学会の共催の国際シンポジウム、精華大学との共同の国際サマースクール、その他の合同シンポジウムの開催が中止になったことは残念でした。しかしながら、いくつかの合同シンポジウムについては、オンラインで開催することができて、良かったと思います。

Question
新センター長になって最初に取り組んだこと、もしくは取り掛かるべきと考えたことは何でしたか
Answer
現在のIMSは、2018年に大まかに言うと免疫学、ゲノム学、遺伝子発現(トランスクリプトーム)の各領域の研究者が統合されたものです。研究室の運営の仕方もそれぞれ大きく違っていました。これは予算の配分などにも大きな影響があります。これをなるべく均等化する方向での調整を前センター長の後をついで少しずつ進めています。
一方、研究面では、これらの領域がお互いに協力することで新しいサイエンスを創出できるチャンスが増えます。それを積極的に進めようと考えています。一例をあげれば、ヒトの免疫細胞でのゲノムと遺伝子発現解析を免疫細胞機能の解明に繋げる研究を進めています。また、実験系と情報系の融合、すなわち相互理解も進めたいと考えてます。
そういうことから、IMSセミナーもリモートで今まで以上に積極的に開催しています。今までは、海外の研究者がたまたま来日したときとか、国内の研究者をお呼びして講演してもらうことが主でしたが、現在は、時差の影響はありますが、リモートで海外の研究者に講演をしてもらうことができています。

Question
COVID19に関してIMSとして取り組んだことを教えてください。
Answer
基本的には、無理やり新しい別のプロジェクトを作るより、現在進めている研究の応用や延長線上のプロジェクトとして積極的に参加しようとしています。結果的に藤井先生のプロジェクトを含めて10以上のプロジェクトが動いています。
また、コロナウイルス自体を扱えるBSL-3の施設をより機能的に整備して、今後のコロナだけでなく、インフルエンザを含めた感染症に対策に備えようとしています。

Question
2020年IMSにとって印象的・重要であったと考えるシンポジウム・イベント等がありましたら教えてください。
Answer
今まで、米国・スタンフォード大学、スウェーデン・カロリンスカ大学とのリモートシンポジウムを開催し、それぞれ、発生・分化領域、人工知能学領域を中心に、若手の研究者の発表を重視してよいシンポジウムができたと考えています。今後、3月までにカナダ・マギル大学と遺伝子解析、免疫学分野、ルクセンブルク大学とシステムズ生物学領域のシンポジウムを行う予定です。
しかし、リモートの有用性は認めながら、将来的には直接集まるタイプの会議が人と人のふれあいを含めて大事だというのが、現在の印象です。

Question
2020年にIMSから発表された論文は168報、うちプレスリリースされた論文は42報です。この中でIMSとして特に印象に残った論文がありましたら教えてください。
Answer
腸内細菌と免疫の関係はIMSが世界をリードしている大きな領域の一つです。今回、大野先生のチームが中枢神経の炎症に、炎症に関係するTh17細胞を誘導する細菌と、抗原特異的にT細胞の増殖を誘導する細菌が相乗的に働き、中枢神経の抗原特異的T細胞を活性化する可能性を見いだしました。これは生命医科学という分野での大きな進展と考えています。

関連リンク:(理化学研究所のサイトにとびます)
Tag team gut bacteria worsen symptoms of multiple sclerosis

Question
2021年はセンター長としてどのような年にしていきたいと考えていらっしゃいますか?またIMSとしてどのように進んでいくべきと考えていらっしゃいますか?
Answer
単にコロナ前に戻るということではなく、2020年の貴重な体験を踏まえて、より発展的な研究センターになるような仕組みを考えていきたいと思います。具体的には、実験系と情報系のより密接なクロストーク、研究対象をモデル動物だけでなくヒト自体を直接研究するような取り組みをより推進していきたいと考えています。
この点で、初期の感染者数の違いもありますが、欧米の主要な研究拠点は、今使える方法論を総動員して、SARS-CoV2感染患者さんの末梢血リンパ球を解析して、次々にNature, Cell, Scienceなどの有力誌に論文を出しています。わが国の免疫学は世界でも有力な分野ですが、ほとんどがマウスの免疫研究です。マウスの研究も重要ですが、ヒトの免疫病態を直接研究する研究者の養成が急務と考えています。そして、それは欧米の追随ではなく、独自の方法論をもった研究にすべきと考えています。

Question
今後IMSとして力を入れていきたいことを教えてください。
Answer
残念ながら社会的状況からも若者を取り巻く環境的にも、センターが抱える状況は厳しいと考えています。しかし、科学の発展のためにもIMSは理研の生命科学の一つのセンターとして、世界中の若い研究者の知的交流のハブとして、ユニークな役割を担えるようにしていきたいと思ってます。先端的な研究分野を複数持つこととで、それを中心に国内外の若手が集う場所になればと思います。
 
ありがとうございました。