インターネットやソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及など、情報の伝達手段が大きく変化する中で、オンラインコミュニティは誰もがアクセスしやすい開かれたコミュニケーションの場となりました。その結果、個人が社会に影響を与える情報を発信する力を持つ一方で、炎上やフェイクニュースといった問題も顕在化しています。
私たちは、正確な情報を伝えることの重要性と、受け手への配慮とのバランスを、オンラインコミュニティに限らず広い文脈の中で、どのように取るべきでしょうか。そして、これからの情報発信やその伝え方をどう考え、実践していくべきでしょうか。
科学技術、そして基礎医科学の分野においても、今まで発信していた情報を、受け手の立場にも配慮した「双方向のコミュニケーション」に向けてどう変えていくべきなのか、我々がどう進んでいくべきなのかを考える時期かと思います。
そこで一方向の情報発信から、受け手の視点も踏まえた「双方向のコミュニケーション」への転換を目指し、5回にわたる所内セミナーが開催されました。各回では、テーマごとに活発な意見交換が行われました。
第1回 2024年9月3日 「何を、何のために、どう伝えるか」を考える 講演者 四ノ宮成祥(国立感染症研究所 客員研究員(前防衛医科大学校長)) 齋藤智也(国立感染症研究所感染症危機管理研究センター センター長) 参加者数 159名 |
第2回 2024年10月4日 科学を社会に伝えるとは何か 講演者 長神 風二(東北大学東北メディカル・メガバンク機構広報戦略室 室長) 中村 朱美(京都大学iPS細胞研究所国際広報室 室長) 参加者数 139名 |
第3回 2024年10月29日 サイエンスコミュニケーションとは 講演者 詫摩 雅子(科学ライター(元 日本科学未来館科学コミュニケーション専門主任)) 川本 思心(北海道大学大学院理学研究院 准教授) 参加者数 146名 |
第4回 2024年12月3日 マスメディアについて 講演者 田中 幹人(早稲田大学政治経済学術院 教授) 瀬川 茂子(朝日新聞科学みらい部) 参加者数 116名 |
第5回 2025年1月28日 患者から見た研究成果 講演者 渡邊 清高(帝京大学医学部教授、メディアドクター研究会幹事長) 武藤 香織(理研IMS 生命医科学倫理とコ・デザイン研究チーム TL) 参加者数 114名 |
第5回(最終回)のセミナー終了後には、登壇者を含む参加者たちがそれぞれにセミナーで学んだことに対して意見を交わす意見交流会も開催されました。その後のアンケートでは参加者より、研究者と社会とのコミュニケーションの重要性、信頼構築の意義、そして受け手の感情への配慮の必要性などを学ぶ機会を得られて良かったこと、今後の実践において、より多様な視点を取り入れるようなこの種の取り組みが継続されることを望む声も上がりました。