Newsニュース

追悼 谷口 克 先生

2024年06月10日 NEWS

Masaru_Taniguchi.jpg卓越した免疫研究者であった 谷口 克 先生が、令和6年4月8日に逝去されました。享年84歳でした。谷口先生は、独創的で先進的な才能と人柄により、免疫学を中心とした基礎医科学の発展に貢献されただけでなく、理化学研究所や千葉大学におけるリーダーとして、研究組織の発展にも貢献されました。谷口先生が、その生涯を通して行ってきた挑戦を振り返り、ご冥福への手向といたします。

谷口先生は,昭和15122日新潟県長岡市に生を受け,新潟高校から千葉大学医学部に入学し、昭和423月に卒業しました。内科研修の後、昭和493月千葉大学医学部病理学(岡林篤教授)にて大学院を修了し,医学博士の学位を授与されました。千葉大学医学部の多田富雄博士、またオーストラリアWalter and Eliza Hall InstituteJacques Miller博士のもとで研究を行った後、昭和556月に千葉大学医学部教授に着任、平成163月まで在職されました。平成137月からは、理化学研究所 免疫・アレルギー科学総合研究センター(RCAI)の初代センター長として平成253月まで活躍し、その後平成254月に改組された生命医科学研究センター(IMS)にて、チームリーダー、さらに名誉研究員として、研究に従事されました。ご逝去される前日まで熱心に研究を進めておられました。

谷口先生の研究の軌跡は、昭和46年に多田博士らとともに免疫抑制という現象を発見したことから始まります。谷口先生は、免疫細胞であるTリンパ球の一部に免疫抑制機能をもつ細胞が存在することを実験的に示すことに成功しました。その後、免疫抑制がどのような細胞によって、どのような分子メカニズムで制御されているのか、具体的に明らかにする研究を粘り強く継続され、約20年をかけてついに、免疫制御機能を有するTリンパ球分画としてナチュラルキラーTNKT)細胞を発見するに至りました。NKT細胞の同定は、当時の免疫学に様々な視点から大きなインパクトを与え、免疫学研究に新しい研究領域を切り拓くことになりました。特に、NKT細胞の活性化によって誘導されるがんに対する免疫拒絶は、がん免疫の基礎研究とがん免疫療法の臨床研究へ大きく発展しました。NKT細胞の発見とその応用は、谷口先生が流行に迎合することなく、自らのテーマを追求し続けた成果であり、切り拓いた新たな研究領域は、広く世界の研究者たちによって引き継がれ、今も発展し続けています。

谷口先生は、研究組織の運営面でも卓越したリーダーシップを発揮し、硬直化していた日本の医学研究・研究システムに挑戦し続けてきました。千葉大学においては、医学部附属高次機能制御研究センターの設立、外部評価システムの導入、大学院システムの再構築などに代表される大学改革を国内の大学に先駆けていち早く進めました。その後、理化学研究所において免疫・アレルギー科学総合研究センターを設立し、初代センター長として、国際的にも際立った第一級の競争力のある研究組織へ育て上げました。免疫学を生物学、基礎・臨床医科学、化学、工学、情報科学、数理科学等と融合し、より広い多層的な統合研究へと先見性を持って発展させるなど、革新的な挑戦を続け、国内はもとより広く国際的に認識される大きな貢献をされてきました。谷口先生は、組織運営を常に最先端化することと、次世代を担う若手人材を長期的に育成することを調和させるために、様々な挑戦的な施策を柔軟に打ち出して新しい制度を創り出し、その結果、多くの人材を育成し、優秀な研究者を輩出してきました。

谷口先生の視線は、常に将来に向けられ、未来に向けて挑戦を続けていました。谷口先生の大きな意志は自身が育んだ人材や創り上げてきた先進的な仕組みなど様々なところに脈々と生き続けています。そして今も、未来を担う多くの若手研究者が世界中で羽ばたいています。

谷口先生から受け渡されたバトンの重みを皆様と共に実感し、未来に向けて共有して、谷口先生には安らかに見守りいただきたいと思います。ご冥福をお祈りします。