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理研IMSがCZI Ancestry Network助成金を受け、日本とアジアにおける免疫の多様性を調査

2021年12月20日 NEWS

チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ(CZI)は、Human Cell Atlas(HCA:ヒト細胞アトラス)における先祖(ルーツ)の多様なドナーからの組織サンプルのデータ統合に関し、2800万ドルの助成金(CZI Ancestry Network Grant)を支援することを発表した。本支援に対するプロジェクトチームは単一細胞(シングルセル)生物学者、細胞組織の専門家、計算生物学者、コミュニティを基盤とした参加型研究の研究者など、31カ国の研究者、16チームにより構成されている。これらの新しいプロジェクトは、遺伝的なルーツが細胞レベルで我々の健康や病気にどのような影響を与えているかを明らかにし、世界の人々の多様性をよりよく反映させる科学的見地を生み出すと期待される。

日本からは、理化学研究所 生命医科学研究センター>のJay W. Shin博士とChung-Chau Hon博士が選出され、日本とアジアにおける免疫の多様性による病気や老化のリスク要因を同定していく。「なぜ、日本の様々な地方の出身の人々が様々な寿命を持つのでしょうか?」とShin博士は問う。「その答えは、我々の持つ環境と遺伝子の間のどこかにあるかもしれません。私たちは、高度な一細胞遺伝学研究を用いて、免疫細胞のプロファイリングを行い、加齢における影響因子を解明することを目指しています。」

「すべての人に効果的な治療法を提供するためには、生医学研究コミュニティは基礎科学研究に対してもっと働きかけなくてはいけません。例えば、現在のゲノムデータの約80%はヨーロッパ系の人々によるもので、これ(割合)を変えていかねばなりません。」とCZIの一細胞(シングルセル)生物学プログラムマネージャーNorbert Tavares氏は言う。「HCAのAncestry Networkは、一細胞解析研究に必要な視点をもたらし、我々の祖先やルーツの情報が健康や病気の状態にどのような影響を与えるかについて重要な洞察を与え、治療法への道筋を示す可能性があります。」

アジアは世界人口の60%を占めているが、ゲノムデータベースにおいてはアジアのサンプルは著しく少ない状況である。HCA-Asiaの主要プロジェクトであるAIDA(Asian Immune Diversity Atlas)は、この不均衡を是正するために、アジアの多様な集団から得られた免疫細胞の性質と変異の程度を明らかにすることを目的としている。Hon博士は、「5'末端遺伝子発現データに含まれるエンハンサーRNAや転写開始点の情報を利用して、コホート全体における転写制御因子の活動を明らかにしたい」と説明し、「健康の状態に加え、免疫刺激における反応が家系、年齢、性別によって影響するかを解析して行きます。」と話す。

AIDAはCZI Ancestry Network Grantの支援を受け、祖先的にルーツが多様なグループを拡大し、アジアを横断する8つの研究チームの参加を可能にし、また本研究に参加することで成果をもたらせるよう長期的なコミュニティを維持していく。また、AIDAは、感染症や自己免疫疾患を含む多様な免疫関連疾患における細胞状態の変化を特徴づける事で「健康」のベースラインを構築し、アジアにおける予防医療の基盤構築を目指している。



チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ(Chan Zuckerberg Initiative)について

チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブは、病気の撲滅や教育の改善から地域社会のニーズへの対応まで、社会の最も困難な課題を解決するために2015年に設立されました。私たちの使命は、すべての人にとって、より包括的で公正かつ健全な未来を築くことです。

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チャン・ザッカーバーグ・イニシアチブ(CZI)

理化学研究所について

理化学研究所は、日本最大の総合研究機関であり、様々な科学分野における質の高い研究で知られています。1917年に東京で民間の研究財団として設立された理研は、その規模と範囲を急速に拡大し、今日では日本全国に世界的な研究センターと研究所のネットワークを擁しています。

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国立研究開発法人 理化学研究所