Projectsプロジェクト

iPSプロジェクト

人工多能性幹(iPS)細胞は、再生医療や免疫療法など多くの医療分野において大きな可能性を秘めています。生命医科学研究センターのiPS細胞研究中核施設では、センター内の他の研究室と協力し、 iPS細胞由来のNKT細胞を使ったがん免疫療法の臨床実用化を目指しています。

本中核施設では、iPS-由来ヒト・インバリアントNKT (Vα24+iNKT) 細胞を生産するために、GMP(医薬品や医療用具の製造管理および品質管理に関する基準)およびGCTP(再生医療等製品の製造管理および品質管理に関する基準)を満たしながら、 IMS 細胞生産ユニット(CMU)を運営しています。Vα24+iNKT細胞の安全性を、非臨床試験によって確認しました。 また、中核施設では、今年開始する頭頚部がんに対するVα24+iNKT細胞がん免疫療法の治験について、医薬品医療機器総合機構との治験相談を間もなく終えるところです。

同種移植の治験における安全性を評価するため、移植した細胞の患者体内での動きを明らかにする細胞追跡システムを構築する必要もあります。この課題に答えるため、 中核施設では今年、全人工設計による生物発光インビボ・イメージング・システム(AkaBLI)の研究に注力し、CRISPR/Cas9 システムを用いて、人工酵素Akaluc 遺伝子を含むヒトiPS細胞を作成しました。私たちは、Akalucを発現しているヒトiPS細胞を、 さらにiPS-Vα24+iNKT細胞へと分化誘導し、ヒトサイトカイン・ノックインNSGマウスに静脈投与しました。 なお、IVISイメージングシステムを使うことにより、移植細胞からの強い生物発光シグナルをマウスで観察できることが判明しました(図1)。 これらの結果から、Akalucを発現しているiPS-Vα24+iNKT細胞を使用すれば、患者体内へ移植した細胞の滞留時間が延長され、将来の治療計画立案に役立つことが期待できます。



マウス体内でAkalucを発現しているiPS-Vα24+iNKT細胞の分析結果

図:マウス体内でAkalucを発現しているiPS-Vα24+iNKT細胞の分析結果
(A)野生型iPS-Vα24+iNKT細胞とVenus-AkalucノックインiPS-Vα24+iNKT細胞を用い、Venus-Akaluc発現細胞をフローサイトメトリー法で分析した結果。
(B)マウスにVenus-Akalucを発現しているiPS-Vα24+iNKT細胞を静脈投与してから1か月後の生物発光画像。
写真は、免疫細胞治療研究チームの藤井眞一郎博士の提供によるものです。

Back to Projects

プロジェクト