Director's Message ご挨拶

人類に貢献する、医療の未来を切り拓くこと。
それが私たちの研究が担う使命です。

理化学研究所 統合生命医科学研究センターIMSは、2013年4月に、科学分野の枠を超え、未来の医療をつくり出すことを目的として発足しました。IMSは、環境に応答する生命の仕組みを理解するために、免疫などの医科学、ゲノム科学、計測・情報科学、医療応用学といった生命科学の垣根を越えて研究を展開する新しいサイエンス「統合生命医科学」を生み出し、そしてその実践により革新的な医療の展開を目指します。
私たちの体はとても頑強な恒常性を保ち、少々の内的・外的環境の変化には影響されません。しかし、この恒常性が破綻してしまった場合、疾患の発症に繋がることがあります。IMSでは、生命の恒常性を司る仕組みの理解や恒常性の破綻によって引き起こされる疾病がどのようにして起こるのかを明らかにし、ヒトの多様性を産み出すゲノム多様性を網羅的に解析する研究と組み合わせ、一人ひとりに合った予防法や治療法を開発する予防医療や個別化医療の実現を進めていきます。
統合生命医科学研究センター長代行 山本雅

統合生命医科学研究センター長代行 山本雅

Principles 基本方針

私たちIMSは、既存の枠組みを超えた研究に挑戦していきます。
01 階層を繋ぐ・超える
生命を理解するために、これまでの科学は、生物をいろいろな部品(階層)に分けて研究してきました。これを「要素還元型研究」と呼ぶこともあります。人間のからだは、臓器(筋肉、骨、内蔵等)、臓器をつくるいろいろな細胞、細胞に含まれる膨大なタンパク質、タンパク質を設計する遺伝子というように、いくつもの階層から成る沢山の部品から成り立っています。しかし、肉眼で見えるからだの症状と、遺伝子という極めて小さな世界には、あまりにも大きなレベルの開きがあり、病気と関係する遺伝子の異常が見つかっても、それがどのようにタンパク質や細胞や臓器で変化を起こし、病気となるのか、繋がりを知ることができませんでした。IMSは、階層を繋いで生命科学を広げ、病気を予防・治療する鍵を見つけます。
02 種の壁を超える
当然ながら、生きた人間を使って実験をすることはできません。そのため、マウスやイヌ、サルといったモデル動物を使って研究が行われています。しかし、同じ哺乳動物でも、種によって、からだのしくみは少しずつ違います。実験動物で安全を確認した新しい薬を、人の臨床試験に使うと、予想し得なかった危険な反応を起こす事故につながることがあります。そこで、人の免疫を研究するために、私達はこれまでにマウスの免疫を人におきかえた「免疫系ヒト化マウス」を開発しています。また、iPS細胞技術を用いて、人の免疫細胞をつくる技術を開発しています。種の壁を超えて人の病気を捉えることで、未来の医療技術をつくります。
03 ヒトの多様性を超える
私たち人間は、一人ひとりの顔が違うように、一人ひとりが異なる性格やからだの機能を持っています。これは私たちのからだの設計図というべき遺伝子配列(全部を合わせたものをゲノムといいます)が個人個人で異なるからです。従って、「ヒト」だからといって、みんなが同じという訳ではありません。遺伝子配列が異なることによって、ある病気にかかりやすかったり、かかりにくかったりすることが明らかになってきました。また治療のために薬を使う際にも、ある人には効果があるのに、別の人には効果がない場合もあります。これも遺伝子配列の違いによって説明できる場合が多くあることがわかってきました。そこで、ヒトのゲノム解析をすすめ、個人個人に合った予防や治療を可能にする個別化医療の研究を進めます。
04 科学の壁を超え、未来の医療へ
未来に向けて、個別化医療・予防医療といった先進的な医療を実現させるためには、細かく分かれている現在の科学分野の枠組みを超え、科学技術のイノベーションに挑戦する人材が必要です。私たちは、次代を担い、独創的な融合研究を行う研究者を、世界と協力して養成し、未来の医療を築いていきます。