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「ヒト化マウス」を用いて医療を大改革!

恒常性医科学研究部門 / 統合計測・モデリング研究部門 / 医療イノベーションプログラム

ヒト化マウスって何?

ヒト化マウスの説明図

ヒトの免疫系を、マウスの体の中で再現することができます。これを、「ヒト化マウス」と呼びます。 血液/免疫系だけがヒト化されてますので、正確には「免疫系ヒト化マウス」と呼びます。

ヒト化マウスって何のために使うの?

免疫学の研究では、主にマウスが用いられてきました。その成果を医療へ応用するには、 マウスで分かった事がヒトにあてはまるか検証することが必要です。しかし、ヒトを使って 実験する訳にはいきません。そこで、マウスの体でヒトの免疫系を再現する 「ヒト化マウス」を用いることによって、人体で起こっている病気の原因やどのように 治療したら良いかなど、前もって知ることができます。

ヒト化マウスってどうやってつくるの?

【 単に普通のマウスにヒトの細胞を注射しただけではできません。 】
普通のマウスにヒトの造血幹細胞を移植しても、マウスの免疫細胞によってヒト細胞が拒絶されてしまいます。
マウス免疫細胞がヒト細胞を拒絶の説明図
【 そこで、拒絶能力のない免疫不全マウスにヒト細胞を注射します。 】
まず、ヒト臍帯血から造血幹細胞を分離します。分離した造血幹細胞を、生まれたばかりの重度の免疫不全マウスに注射します。こうすると、マウスの免疫系の全てがヒト免疫細胞で構成されるようになります。

拒絶能力のない免疫不全マウスにヒト細胞を注射の説明図

ヒト化マウスってどう役に立つの?

【 薬剤の安全性テストに 】
薬剤の安全性テストは、マウスなどの小動物の次に、犬などの大型動物、さらにヒトにより近いということでサルなども用いられます。しかし、それだけ安全性を確認したあとでも、実際にヒトでの臨床試験で予想のつかないような事故*が起こる事があります。
ヒト化マウスは、ヒトの細胞を用いて安全性をテストできるという点で、大変有用です。
* TGN1412第I相試験事件
英国で2006年に起きた事件。 TGN1412 は、免疫を活性化する作用をもつ新薬で、サルを用いた実験では安全性が確認されていた。 6人の健康な志願者にこの新薬を試験投与したところ、6人とも呼吸困難などの重度の急性反応を起こした。
薬剤の安全性テストの説明図
【 感染実験モデルとして 】
さらに、ウィルスや細菌の感染実験など、ヒトを使ってはとてもできないような実験に用いる事ができます。
免疫系ヒト化マウスの利用の説明図
【 ヒトの病気の再現モデルとして 】

血液系・免疫系がかかわる病気については、特定の患者さんの病気を再現することも可能になるでしょう。 沢山の患者さんから作製したヒト疾患再現モデルマウスを研究に用いれば、病態の理解が飛躍的に進む事が期待できます。

また、患者さんの病気が再現されたマウスを用いて、どの薬剤が一番効くかテストできます。つまり、 その患者さんに最適な治療法を探ることができるのです。このような医療をテーラーメード医療といいます。
例えば、患者さんの白血病を再現させて、どの抗がん剤が一番効くかを、テストすることができます。

ヒト疾患再現モデルの説明図

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