応用ゲノム解析技術研究チーム

研究紹介

 

ミトコンドリア病やその他の希少疾患・遺伝性疾患の遺伝子解析

ミトコンドリア病(ミトコンドリア呼吸鎖異常症)は5,000出生に一人の割合で生じる比較的頻度の高い代謝異常症です。ミトコンドリアゲノムの異常のみならず核ゲノムがコードする400個ほどのミトコンドリア関連遺伝子に変異が入ることにより生じることが知られています。依然として未診断(遺伝子レベルで原因となる異常を同定できない)症例の割合も多く(約6-7割)、また遺伝子診断が得られても病態の解明が全く十分ではないものが数多く存在しています。

当研究室では、ゲノム、トランスクリプトーム、プロテオームを始めとするオミックス解析の手法を用いて、順天堂大学・埼玉医科大学・千葉県こども病院などとの共同研究で、ミトコンドリア病を始めとする希少疾患の原因遺伝子異常の同定、病態の解明や治療薬開発につながる知見の探索を行っています。

 

シングルセル解析によるヒト疾患や生命現象の理解

神経疾患(特に神経変性疾患)、呼吸器疾患などのヒト臨床試料や、実験動物(マウス、サル)の末梢感覚組織や脳組織から、高品質・高精度のシングルセル解析データを生成・解析することにより、ヒト疾患の原因・動態や、生体マルチセンシングシステム(特に味覚-体液感覚の連携システム)を理解し、その治療法や健康長寿社会の実現につながる研究を行っています。

 

転写因子によって駆動される細胞分化の研究(ダイレクトリプログラミング)

順天堂大学大学院医学研究科との共同研究で、分化した体細胞を目的の細胞へと幹細胞を介さずに誘導する手法である、ダイレクトリプログラミングの技術開発および原理解明を行っています。ダイレクトリプログラミングに必須の転写因子群が、どのようにヒトゲノムに作用して細胞の分化状態を変換しているのかを、オミックス解析を駆使して解明するとともに、そこから得られた知見からより優れた手法の開発に役立てようとしています。

 

医学的課題に関連する次世代シーケンシング技術の開発

高効率・低コストなシングルセル解析

ロングリードシーケンシング技術

などを開発しています。

 

脊椎動物胚発生における遺伝子発現ゆらぎの研究

ネッタイツメガエル胚をモデルとして、遺伝子発現の個体差を高精度に測定することで、胚発生における遺伝子発現制御ネットワークの揺らぎと進化の関係を探っています。

 

光学的電気生理解析およびシングルセル解析を用いた心疾患の病態解明

わずか3cmほどのゼブラフィッシュはその胚の透明性やヒトとの遺伝子相同性から近年急速に実験動物としての価値が高まっています。私たちはゼブラフィッシュを用いたリバースジェネティクスと光学マッピング等の高精細な電気生理学的研究手法、さらにシングルセルレベルでのトランスクリプトーム解析を組み合わせて遺伝性心筋疾患や難治性不整脈の病態解明に取り組んでいます。